大遠忌報告
修験道の祖であり、我が金峯山寺のご開祖でもある役行者神変大菩薩。その神変さまの 祖恩に報いる役行者一三〇〇年大遠忌法要が五月十一日・十二日の開闢から六月七日の
結願まで二十八日間にわたって盛大に営まれ、期間中、五万人に上る信徒や一般の参詣者 で金峯山寺は空前の賑わいをみせたが、その全日程の法要とイベントの軌跡を紹介する。
役行者ルネッサンス!「新世紀に甦る修験の里、吉野に集う」というテーマの下、今回の 役行者神変大菩薩一三〇〇年大遠忌法要へ向けて金峯山寺では様々な準備、様々な取り
組みを進めてきた。そして去る五月十一日に大遠忌招待者法要・蔵王権現本地堂入仏開眼 落慶法要厳修と、続く十二日の開闢法要を以て金峯山寺大遠忌は開幕し、多くの成果を上げ
る中、六月七日には結願法要が執り行われ、無事大団円を迎えた。その間、蔵王堂や新建立 の蔵王権現本地堂を中心に、開祖讃迎の慶讃法要執行は二十三会を数え、また慶讃イベントも
三十を越える催事が行われ、本宗宗徒はじめ、多くの一般の人々を巻き込んで、正に役行者 ルネッサンスに相応しい賑わいを見せたのであった。
■五月十一日(木)
大遠忌法要の開闢は五月十二日であるが、前日十一日には大遠忌記念事業の 「蔵王権現本地堂」の入仏開眼落慶法要が本地堂工事関係者や、宗内外の来賓者など約二百名の
招待者を招き、五條順教管長猊下大導師のもと、四箇法要を以て厳粛に厳修された。
法要後、蔵王堂に一同が移動して、秘仏蔵王権現特別開扉式が執り行われ、昭和六十年以来、 十五年ぶりにご開帳なった御本尊の威容が招待者の前に現わされ、その御宝前で管長猊下の
ご挨拶が行われた。続いて延暦寺代表梅山竜円副執行、醍醐寺座主麻生文雄門跡猊下、 近畿日本鉄道㈱社長辻井昭雄氏の三氏より祝辞が述べられ、更に東南院に会場を移して記念
レセプションが催され、約二百名余の招待者らが京都祇園の舞妓さんの踊り披露など、本地堂落慶を 賀するひと時を過ごした。
■五月十二日(金)
大遠忌法要初日は蔵王堂秘仏御宝前で、四箇法要を以て開闢法要が執り行われ、併せて蔵王堂 記念式典ステージ前では、管長猊下の開闢宣言に始まる百人合唱団の蔵王讃歌斉唱など、
オープニング式典が華々しく執り行われた。幸いにして天候にも恵まれ、創作モダンバレエ 「行者散華」や叙情歌コンサート、戯曲「行者伝説」など大遠忌開幕を飾るに相応しい催しも行われ、
盛大なセレモニーとなった。夕方一時雨が降ったが、予定通りよしの燈花会と江州音頭の奉納も行われた。
国宝蔵王堂を二千本のローソクで荘厳する「よしの燈花会」は二十一日まで十日間催行の 予定であったが、その内の三日間は雨で中止となり、初日の十二日を入れて七日間の催行となった。
またこの日を以て十五年ぶりの秘仏御本尊一般公開が始められ、六月七日の結願日まで 二十七日間に亘って開帳されることになった。秘仏ご開帳は機内各地を中心に世間の注目を
浴びることとなり、期間中、約五万人の参観者を集めた。
■五月十三日(土)
大遠忌法要の二日目。この日は午前十一時から五條順教管長猊下大導師のもと、法華懺法会が 蔵王堂で営まれた。法会では蔵王堂にはあふれんばかりの参詣者が詰めかけ、この大遠忌の慶事の
喜びをを共に分かち合ったのである。また、午後一時からは新建立の本地堂において、こけら落としとも 言える大般若転読法要が五條覚照執行長お導師のもとに厳修され、本地堂もまたあふれる参詣者で
ごった返した。
この日のイベントは午後二時からのチャイルドバレエパフォーマンスとメインイベントの 「第一回吉野権現能」が催された。午後六時、権現能開闢法要が管長猊下導師のもと蔵王堂にて
執り行われたのち、座敷能として「谷行」が、人間国宝宝生閑氏や観世流大槻文蔵社中の演者に よって奉納され、観能客二百五十名は、蔵王堂での幽玄の世界に酔いしれていた。「こんな
素晴らしい御能は初めて観た」と感動を口にする人が後を絶たない絶賛ぶりであった。権現能は 来年以降の催行も計画されている。
■五月十四日(日)
大遠忌法要三日目は午前十一時に千衣法要が営まれた。千衣法要とは大遠忌記念事業の 一つとして平成五年から発願された「千衣裁製」(釈尊如法のお袈裟を一千領製作する)で製作
したお袈裟を着けて、法要を行うというもので、本宗教師から百名を限定して出仕者を募り、 在家教団ならではの、宗団挙げての報恩行を営んだのであった。
行列は午前十時半、東南院を出発し、法螺の先導のもと、吉野山の町を練り歩いて蔵王堂へ 入堂。出仕の宗徒、参詣の宗徒が蔵王堂内を埋め尽くし、立錐の余地のない大盛会ぶりであった。
またこの法会を営んだことで、江戸時代中期の慈雲尊者以来絶えて久しい「千衣裁製」に 取り組んだ金峯山寺の記念事業が、広く世に意義を示すことにもなった。
続いて午後二時からは蔵王堂境内庭前で管長猊下大導師による慶讃採灯大護摩供が厳修された。 大護摩供では時ならぬ雨となり、正に法雨慈雨ともいえる柔らかな雨を受けていた。
参加の山伏数は二百名を越え、正に大遠忌法要随喜に相応しい本宗修験大衆の参集を得る ことが出来、開祖報恩の大浄行となった。
イベントは千本搗きと大井権現太鼓の奉納演奏が行われ、二千人の人々で蔵王堂境内は賑わった。
■参拝月間中の法要催事
五月十二日~十四日までの大遠忌法要に引き続き、五月十五日から結願日の六月七日までは 記念参拝月間として、連日、週末ごとに各種慶讃法要や多岐に渡る慶讃イベントが繰り広げられた。
記念参拝月間中の法要催事は次の通り。
五月十九日(金)
この日は例年脳天大神大祭日であるが、今年は大遠忌の慶讃大護摩供として執り行われ、 二千人余の参詣者で、蔵王堂、脳天大神とも終日、賑わっていた。
五月二十日(土)
この日は午前中に当山歴代住職物故者法要が、午後からは吉野古道保存会報告法要が共に 本地堂において営まれた。古道保存会法要は吉野山内の喜蔵院、東南院、善福寺、
大日寺各住職が出仕し、吉野古道発展を祈願した。 また夜には燈花会と龍神神楽の奉納が行われ。夜遅くまで賑わっていた。
五月二十一日(日)
午前十一時より、蔵王堂境内において金峯山寺青年部主催による慶讃採灯大護摩供が、 五條良知青年部部長導師のもとに執り行われた。この日は二十一名の稚児山伏たちも参加し、
ちびっ子山伏問答も披露するなど、その可愛い姿に参道から喝采が飛んでいた。大遠忌での 新しい試みである。 イベントとしては藤間流日本舞踊と民謡奉納が特設ステージで行われた。
五月二十二日(月)
この日も午前十一時から、福田会主催法要が本地堂において福田会会員出仕の下に執り行われた。
五月二十三日(火)
この日は天台寺門宗三井寺の慶讃法要の日。三井寺では大峯奥駈修行を三年に分けて 修行されているが、今年は吉野帰山の年に当たり、金峯山寺大遠忌を慶讃して採灯大護摩供が
厳修されることになった。午後一時、五條順教管長猊下が随喜出仕される中、蔵王堂境内大護摩供道場において、 三井寺長吏福家俊明師大導師の下、六十名にのぼる三井寺修験大衆の手によって、大護摩供が
厳修された。
五月二十七日(土) ~二十八日(日)
この週末は金峯山青年僧の会が主催担当法要日。まず二十七日午前十一時から、 五條順教管長猊下を導師に迎えて、法華経不断経一昼夜修行開闢法要を本地堂にて厳修。
その後、僧の会会員を中心に、一昼夜にわたり各自交代しながら不断経修行を果たし、 四十人の僧侶が法華経読誦に専心した。本山においては絶えて久しい法華経不断経会の
復興は役行者ルネッサンスのテーマに相応しい修行会となった。翌午前十時から 不断経修行者総出仕で、結願法要が柳沢真悟副会長導師の下、執り行われ、魔事なく、
一昼夜の修行会を終えた。読経関数は総数二十一巻・七十品にのぼった。 またイベントしては大正琴と尺八の奉納演奏が蔵王堂堂内で行われた。
五月二十八日(日)
僧の会主催の慶讃採灯大護摩供は、不断経修行を終えた午後一時から、会員はじめ、 午前中の山伏コンサート出仕の修験者など八十名が参加。また全日本仏教青年会を
代表して、矢坂誠徳直前理事長や神戸仏教徒会、天台仏教青年連盟の諸大徳を迎え、 高塚覚順僧の会会長導師の下、盛大に厳修された。
五月三十日(火)
この日は裏千家家元鵬雲斎大宗匠による蔵王堂献茶式と吉野での大茶会が催行。 実に蔵王堂で三十三年ぶりのお家元献茶式が執り行われた。
六月三日(土)
この日は金峯山寺会式協賛会主催法要日で午前十一時からは蔵王堂で法華懺法会 、また午後二時からは女人行者採灯大護摩供が蔵王堂境内庭前において厳修された。
協賛会の法華懺法は清水隆泉副会長を中心に、約二年にわたり会員相互で研修して この日を迎えたもので、その成果が存分に発揮された法要となった。
更に女人採灯大護摩供は本宗独特の女人行者主体の護摩供修行であるが、今回の 大遠忌を機に初めて蔵王堂境内での厳修となった。協賛会副会長野田珠昇採灯師のもと、
本宗精鋭の女人行者が赤誠を以てこの記念すべき大護摩供を修行した。
この日の夜は、よしの燈花会の荘厳の中、河内音頭の奉納が行われ、踊り手で境内は 夜遅くまで賑わいを見せていた。
六月四日(日)
三日同様、会式協賛会主催の法華懺法会と慶讃採灯大護摩供が執り行われた。 大護摩供は天候にも恵まれ、辻野快順会長のお導師のもと、約六十名の修験大衆が
出仕し、本宗作法如法の大護摩供が厳修された。またイベントとしては近鉄主催による OSK日本歌劇団特別講演「行者讃歌」が蔵王堂前特設ステージを舞台に催された。
六月七日(水)
いよいよこの日結願法要を迎えることとなった。二十八日間にわたる大団円の一日である。 午前十一時、結願採灯大護摩供が五條順教管長猊下大導師のもと、本山修験
百五十名が出仕し、盛大に大遠忌結願の大護摩供を厳修した。
続いて午後一からは千衣法要。百名を越える本宗教師の僧列は大遠忌結願を飾るに 相応しい大法要である。午後二時入堂。本宗僧侶の読経が秘仏御宝前にこだまし、
多くの成果をもたらした一三〇〇年大遠忌法要がここに満願を迎えたのである。法要後、管長猊下はじめ山衆が大遠忌ステージ前の蔵王堂回廊に並び立ち、
猊下の閉幕のご挨拶と共に、蔵王讃歌を式衆、参拝者一体となって唱和し、大遠忌 法要結願を締めくくった。
またフィナーレ式典として、蔵王堂内と特設ステージにおいて、狂言師和泉元弥氏の 座敷狂言「蝸牛」とトークショー、また中国古ソウの奏者ジャン・シャオチンさんの
ミニコンサートと奉納演奏が行われ、千人を越える参観者の中、万雷の拍手を以て、 記念すべき大法要が幕閉した。
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